特別賞

光延 さん

福岡学習センター(3年生)

 教室に先生の声が響いた。去年の九月四日頃のことだった。私たちは、後期の始業式に出席していた。私は、また同じような内容の話だなと聞き流していた。他の生徒たちも同じことを考えている様で窓から外を眺める人や、スマホを見ている人達もいた。だがこの日は、普段と違った。私が普段通り聞き流していると、担任の先生がどこか期待するような声で、
「このたび福岡学習センターは、生徒会を設立することになりました!いやー僕はね、少し思っていたんだよ、この学校は全日制よりも行事が少ないからせめて、生徒会くらいはできないかなって。誰か入りたい人はいませんか。」

  と先生が言った。私は、少し期待した。今、手を挙げることができたら普段の退屈が少しはましになるかもしれない、と思ったが、どうしても手を挙げることができなかったのだ。手を挙げたらクラスメイト全員の注目を集めてしまう。その視線がどうしても怖かった。先生が、 「わかった。気が向いたらいつでも声をかけてね。」

  と言ってくれた。どこか諦めたような声だった。私はこんな自分がきらいだった。入ってみたいと思っているにもかかわらず、もう無理だ、帰りたいと、この時には常に諦めている自分がいやだった。このあと、少し連絡事項を聞いて始業式が終わった。クラスメイトが帰る中、自問自答を繰り返していた。(どうするんだ。どうする?帰るか?逃げるのか?この先もずっとレポートの提出日の時だけ学校に来る生活でいいのか?)と。ずっとうじうじ悩んでいたが、結局、諦めた。やっぱり無理だと自分に言い聞かせて席を立ったその時だった。好きな本がふと脳裏をよぎった。その本には、本当に大切な物について書いてあった。それを思い出したとき、足が自然と職員室に向いた。歩きながら考えていた。(もし生徒会に入ったら、あの本で描かれていたような大切な物を手に入れることができるかもしれない。)

  こうして私は、生徒会に入った。生徒会長として……。なぜ会長になったのか今もよく分からないが後悔はあまりなかった。

  そうして生徒会長になって、レクリエーションや入学式、オープンキャンパスに会長として出席した。活動していくなかで、人からの視線をあまり、気にすることがなくなったし最初から諦めることを考えなくなっていった。

  これが私の一年での大きな変化だ。今はこうして作文を書きながら、志望理由書のことを考えている。将来の夢が国語の教師になったのだ。一年前の、うじうじしていた自分が聞いたら信じられないと思うだろう。今でさえ夢のように思うことがあるけど、本当にあった出来事だ。将来は自分のような子供たちを支えていける人になりたい。